「このシャントは何年もちますか?」
これは、透析を始める患者さんからよくいただく質問の一つです。
シャントは透析を続けるために欠かせない大切なパートナーです。
だからこそ
「すぐに使えなくなったらどうしよう…」
「また手術になるのかな?」
「繰り返し手術が必要な人なんているの?」
と不安になるのは当然のことです。
結論からお伝えすると、シャントに「〇年もつ」という決まった寿命はありません。
せっかく作ったシャントですが数か月で治療や処置・手術が必要になる方もいれば、10年、20年以上同じシャントを使い続けている方もいらっしゃいます。
その違いは、生まれつきの血管の状態だけではありません。
毎日の観察や、必要なときに適切な治療を受けることも、シャントを長持ちさせる大切なポイントです。
この記事では、論文やガイドラインをもとに、シャントの寿命や開存率、長持ちさせるコツについて分かりやすく解説します。
この記事でわかること
- シャントに寿命はあるの?
- シャントは何年もつ人が多い?
- 開存率とは?
- 長持ちする人の共通点
- シャントを長持ちさせる方法
シャントに「寿命」はあるのでしょうか?
まず最初にお伝えしたいのは、
シャントには決まった寿命はありません。
電化製品などのように「5年で使えなくなる」「10年が限界」といった年数が決まっているわけではないのです。
実際には
- 数か月で血管が細く・狭くなってしまう方
- 数年でPTA(風船治療)が必要になる方
- 20年以上同じシャントを使い続けている方
まで、本当にさまざまです。
つまり、「何年もつか」は患者さん一人ひとり異なるのです。
大切なのは、シャントの寿命を気にし過ぎることではなく、今あるシャントとできるだけ良い状態で長く付き合っていくことです。
シャントは何年もつ人が多いのでしょうか?

医療従事者も「シャントがどれくらい持つのか?」「どういった人が長持ちしないか」は、気になるところ。実は、世界中の研究者がシャントの寿命について研究しています。シャントの寿命を調べた研究では「開存率(かいぞんりつ)」という指標が使われます。
開存率とは簡単に言えば「シャントが使い続けられている割合」のことです。
ある大規模な研究では、シャントを作ってから追加の治療を受けずにシャントを使い続けられた方の割合(一次開存率)は、
- 1年後:約60%
- 2年後:約50%
という結果でした。
一方で、途中でPTAなどの治療を受けながらシャントを使い続けられた方(二次開存率)は、
- 1年後:約70%
- 2年後:約60%
と報告されています。
この結果から分かるのは、
・多くの患者さんがシャントを作ったあとに、追加で治療を受けている
・治療を受けることで、多くのシャントがその後も使い続けられている
ということです。
つまり、「治療が必要になった=シャントが終わり」ではありません。
「開存率」って何?
「開存率」という言葉を初めて耳にした方も多いでしょう。
ここでは、患者さん向けに開存率について簡単に説明します。
一次開存率
一時開存率とは、シャントを作ってから、一度も追加の治療を受けずに使い続けられている割合です。
つまり「1回目の手術のあと、順調に使えている人」の割合と考えると分かりやすいでしょう。
二次開存率
二次開存率とは、途中でPTAなどの治療を受けながらも、シャントを使い続けられている割合です。
言い換えれば「途中でメンテナンスをしながら、大切に使い続けている人」の割合です。
患者さんにとって大切なのは、こちらの考え方です。
PTAを受けることは失敗ではなく、シャントを守るための治療なのです。
シャントが長持ちする人の共通点
シャントが長持ちする人にはある共通点があるといわれています。
もちろん、生まれつきの血管の状態には個人差があります。
しかし、それだけでシャントが長持ちするかが決まるわけではありません。
長くシャントを使われている患者さんの共通点を紹介します。
毎日シャントを観察している
ドクドクとした拍動や、ザーザーという音を毎日確認しています。
小さな変化を見逃さない
「今日は音が少し弱いかな?」
「なんかちょっと変化も?」
そんな小さな違和感を早めに相談ることで、異常の早期発見につながっています。
必要な治療をためらわない
PTAが必要と言われたとき「もう少し様子を見よう。」ではなく、適切なタイミングで治療を受けています。
適切なタイミングで治療を受けることで、シャントへのダメージを最小限にできますし、シャントがつまって作り直す…なども避けられます。
シャントを大切にしている
血圧測定や採血を避けたり、腕を締め付けないようにしたりと、日頃からシャントを守る生活を心掛けています。
シャントが短期間で使えなくなる原因
シャントは、さまざまな原因で使いにくくなることがあります。
代表的なものには
- 血管が狭くなる(狭窄)
- 血栓ができる(閉塞)
- 感染
- 血流不足
- 糖尿病や動脈硬化の影響
などがあります。
しかし、多くの場合は突然ではありません。
- シャントの音がいつもと違う
- シャントを触ると違和感がある
- 穿刺を失敗することが増えた
- いつもより血が止まりにくい、止まってもまた出てしまう
体はさまざまなサインを出してくれています。
だからこそ、透析に来院した時だけでなく、毎日の観察が大切なのです。
PTAはシャントの寿命を延ばすための治療
「PTAになったらシャントはもう終わりですか?」
そんな質問をいただくことがあります。
答えは
いいえ。
PTAは、シャントの寿命を縮める治療ではありません。
むしろ
シャントを長く使うためのメンテナンスです。
狭くなった血管を風船で広げることで、血流を改善し、シャントを使い続けられる可能性を高めます。
実際に、PTAを繰り返し受けながら10年以上同じシャントを使われている患者さんも少なくありません。
20年以上使い続けている方もいます
「シャントは10年もちますか?」
という質問に対して「必ずもちます。」とはお答えしていません。
しかし20年以上同じシャントを大切に使われている患者さんも実際にいらっしゃいます。
その方々に共通しているのは、特別なことをしているわけではありません。
毎日シャントを観察し、
異常があれば早めに相談し、
必要な治療を受ける。
その積み重ねが、長く使えることにつながっています。
よくある質問
Q. PTAを受けると寿命は短くなりますか?
いいえ。
PTAはシャントを長く使うための治療です。
Q. 人工血管は何年もちますか?
人工血管も個人差があります。
人工血管の方も定期的なチェックやメンテナンスが重要です。
Q. シャントは一生使えますか?
一生使える方もいますが、途中でPTAや再手術が必要になる方もいて、個人差が大きいです。
大切なのは、状態に合わせて適切な治療を受けながら使い続けることです。
看護師からひとこと

患者さんから「このシャント、何年もちますか?」と聞かれることがあります。
でも、私はいつも「何年持つかはお約束できないけれど、一緒に長持ちさせていきましょう。」とお伝えしています。
シャントの寿命はあなた自身の寿命と同様に、誰にも正確には分かりません。
だからこそ、今日のシャントの状態を大切にすることが何より重要です。
毎日の観察、定期的な診察、そして必要なときにはPTAなどの治療を受けること。
その積み重ねで、10年、20年と大切に使われている患者さんを、私はたくさん見てきました。
シャントは、医療スタッフだけが守るものではありません。
患者さんと私たちが一緒に守っていく、大切な「命をつなぐパートナー」なのです。
今日からできること
今日から、毎日30秒だけシャントを確認する習慣を始めてみましょう。
- ドクドクと拍動を触ってみる
- ザーザーという音を聞いてみる
- 腫れや赤みがないか見てみる
もし「いつもと違う」と感じたら、その小さな変化を大切にしてください。
早めの相談が、シャントを長く守ることにつながります。
まとめ
- シャントに決まった寿命はない
- 数か月で治療が必要な方もいれば、20年以上使われている方もいる
- 開存率とは、シャントが使い続けられている割合のこと
- PTAはシャントを長く使うためのメンテナンス
- 毎日の観察と早めの受診が、シャントを長持ちさせる最大のポイント

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