
「透析が終わると、ぐったりしてしまう」
「家に帰ると何もする気になれず、すぐ横になってしまう」
「透析の日は眠くて、一日が終わってしまう」
このように感じている透析患者さんは少なくありません。
透析後に感じる強い疲れやだるさは、単なる「気のせい」ではなく、透析後疲労(post-dialysis fatigue:PDF)として研究されている症状です。
2024年に日本透析医学会雑誌に掲載された総説では、メタ解析で血液透析患者さんの約60%に透析後疲労がみられたと報告されています。
一方で、なぜ透析後疲労が起こるのかについては、まだ十分に解明されていない部分があります。
この記事では、透析後に疲れる・だるい・眠いと感じる理由や、疲れたときの過ごし方、医療スタッフへ相談したほうがよいケースについて、看護師がわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 透析後に疲れたり、だるくなったりする理由
- 「透析後疲労」とは何か
- 透析後の疲れはどのくらい続くのか
- 疲れたときに自分でできること
- 医師や看護師に相談したほうがよい症状
透析後に疲れる・だるくなるのは珍しいことではない
透析が終わったあと、
「体に力が入らない」
「何もする気にならない」
「横になりたい」
「眠くて仕方がない」
と感じることがあります。
このような透析後の疲れや脱力感は、多くの患者さんが経験しています。
「透析後疲労」という症状がある
医学的には、血液透析後に生じる疲れや全身の衰弱を伴う症状を透析後疲労(post-dialysis fatigue:PDF)と呼ぶことがあります。
2024年の日本透析医学会雑誌の総説では、透析後疲労を有する患者さんはメタ解析で約60%とされています。
つまり、透析後に「疲れる」「だるい」と感じてしまうこと自体は、決して珍しいことではないのです。
また、日本の血液透析患者さんを対象にした調査では、患者さんが重要だと考える自覚症状として「透析後の脱力」や「慢性疲労感」が挙げられています。
透析後の疲れは、患者さんの生活の質を考えるうえでも大切な症状なのです。
疲れ方には大きな個人差がある
ただし、透析後の疲れ方はすべての患者さんで同じではありません。
少し休めば元気になる人もいれば、帰宅して数時間横にならなければ動けない人もいます。
また、「透析日は予定を入れられない」という患者さんもいるでしょう。
さらに、同じ患者さんでも毎回同じ疲れ方とは限りません。
「前回は大丈夫だったのに、今日はとても疲れた」ということもあります。
そのため、ほかの患者さんと比較して「自分は疲れすぎなのかな」と考えるより、自分の場合は透析後どのくらいで普段の状態に戻れるのかを知っておくことが大切です。
透析後に疲れるのはなぜ?
「透析をすると、どうしてこんなに疲れるのでしょうか?」
患者さんから聞かれることがあります。
実は、透析後疲労が起こる仕組みは、現在も完全には解明されていません。
透析後疲労には、透析による心血管系への影響、検査値や臨床的な要因など、さまざまなものが関連すると考えられています。
そのため、「これが原因です」と一つだけに決めることはできません。
ここからは、透析後の疲れに関係する可能性があるものを見ていきましょう。
① 透析によって体の中の水分量が変化する
血液透析では、腎臓から十分に排出できなくなった余分な水分を取り除きます。
これを「除水」といいます。
たとえば、次の透析までに体重が2kg増えていた場合、その増えた体重の多くが水分であれば、透析中にその水分を取り除いてドライウェイトに近づけていきます。
透析では、このような体液量の調整を数時間かけて行います。
そのため透析中には、体の中で水分量や血液循環などの変化が起こっています。
特に除水量が多い場合などには、透析中や透析後の体調に影響することがあります。
② 透析中・透析後に血圧が下がることがある
透析中には血圧が低下することがあります。
水分を取り除くスピードに対して血管内へ水分が戻ってくるスピードが追いつかなくなることなど、複数の要因が関係します。
血圧が低下すると、
- だるい
- 力が入らない
- めまいがする
- ふらつく
- 気分が悪い
などの症状が出ることがあります。
透析が終わったあとも血圧が低い状態が続いていれば、「疲れた」「動きたくない」と感じることもあります。
透析患者さんでは血圧と体液量の管理が重要な課題であり、透析処方や除水などとの関係も含めて考える必要があります。
③ 透析による循環器への影響
血液透析では、数時間の治療中に体液量などが変化します。
その過程で心臓や血管を含む循環器系にも影響が生じます。
透析後疲労についての研究でも、血液透析による心血管系への影響は関連要因の一つとして検討されています。
ただし、これだけで透析後の疲れをすべて説明できるわけではありません。
「透析で心臓が疲れているからだ」と単純に考えるのではなく、複数の要因が重なっている可能性があると考えておきましょう。
④ 貧血など別の原因が関係していることもある
疲れやだるさは、透析そのものだけで起こる症状ではありません。
たとえば腎機能が低下すると、赤血球をつくるために必要な「エリスロポエチン」というホルモンが十分につくられなくなり、腎性貧血を起こすことがあります。
貧血があると、
「疲れやすい」
「息切れがする」
「体を動かすのがつらい」
などの症状が現れることがあります。
特に透析後だけではなく、透析をしていない日にも疲れやだるさが続いている場合には、透析後疲労だけでなく別の原因も考える必要があります。
自己判断せず、採血結果なども含めて医師に確認してもらいましょう。
⑤ 睡眠やその日の体調などが重なっていることもある
透析患者さんの疲労には、睡眠や身体活動、心理的な状態など、さまざまな要素が関連する可能性があります。
「昨日あまり眠れなかった」
「最近食欲がない」
「いつもより体調が悪い」
といった日は、透析後の疲れ方が普段と違うこともあるでしょう。
透析後疲労は、一つの原因だけではなく、透析条件や患者さん自身の状態など複数の要因が関係して起こっている可能性があります。
透析後の疲れはどのくらい続く?
透析後の疲れがどのくらい続くかには個人差があります。
透析後疲労は数時間続く症状として報告されていますが、「○時間以内なら正常」「○時間以上なら異常」という明確な基準があるわけではありません。
そのため、時間そのものよりも、
「以前と比べてどう変化したか」
を見ることも大切です。
自分が回復するまでの時間を知っておこう
たとえば、
「透析後に1時間休めば普通に動ける」
という人が、最近になって、
「夕方まで寝ていないと動けない」
ようになったのであれば、その変化は医療スタッフに伝えてほしい情報です。
反対に、毎回ある程度同じような経過で回復しているのであれば、それも自分の体調を知るための一つの目安になります。
疲れ方を簡単に記録してみよう
透析後の疲れが気になる場合には、簡単な記録をつけるのもおすすめです。
たとえば、
「今日は透析後3時間くらい横になった」
「今日は血圧が低く、帰宅してからもふらついた」
「今日はいつもより体重増加が多かった」
などです。
毎日細かく記録する必要はありません。
「いつ」「どんなときに」「どのくらい疲れたか」がわかるだけでも、医師や看護師に相談するときの大切な情報になります。
透析後に疲れるときはどうすればいい?
透析後に疲れたからといって、必ずしも「頑張って動かなければならない」わけではありません。
その日の体調を確認しながら過ごすことが大切です。
無理をせず休む
透析後に疲れているときには、決して無理をしないことが大切です。
特に透析を始めたばかりのころは、自分がどのくらい疲れるのか、どのくらいで回復するのかがまだわからないことがあります。
まずは余裕をもった予定を組み、自分の体調のパターンを知っていきましょう。
ただし、「毎回何時間も寝込まないと生活できない」など、日常生活への影響が大きい場合には、単に休むだけで終わらせず医療スタッフへ相談してください。
立ち上がるときはゆっくりと
透析後に血圧が低くなっていると、急に立ち上がったときにふらつくことがあります。
特にベッドから起きるときや椅子から立ち上がるときには、慌てずゆっくり動きましょう。
「いつもと違う」と感じたら、透析室を出る前に看護師へ伝えてください。
疲れているからと水分をたくさん飲まない
ここは特に注意してほしいポイントです。
「透析で水分を抜いたから疲れたのかな」
「水を飲めば元気になるかも」
と考える方がいるかもしれません。
しかし、透析患者さんでは水分管理が必要な場合があります。
疲れやだるさがあるからといって、自己判断で大量の水分を飲むことはおすすめできません。
とてものどが乾いている場合や血圧が下がっている場合も、自分で判断するのではなく透析施設へ相談してください。
透析日の予定を工夫する
毎回透析後に疲れやすいことがわかっている場合には、生活の予定を調整することも一つの方法です。
たとえば、体力を使う買い物や外出を非透析日にするなど、自分の体調に合わせて予定を組みます。
透析後に比較的元気に過ごせる人もいれば、休息が必要な人もいます。
「ほかの人ができているから自分も」と考える必要はありません。
自分が無理なく続けられる生活リズムを探していきましょう。
こんな疲れ方は医師・看護師に相談しよう
透析後の疲れは珍しい症状ではありません。
しかし、すべてを「透析をしているから」と考えるのもよくありません。
特に、
- 今までより明らかに疲れが強くなった
- 疲れが長時間続き、日常生活に影響している
- 透析のたびに強い脱力感がある
- めまいやふらつきを繰り返す
- 透析中や透析後に血圧が大きく下がる
- 透析日以外にも強い疲労感が続いている
- 息苦しさや胸の痛み・違和感などを伴う
といった場合には、医師や看護師へ相談してください。
特に、突然の強い息苦しさや胸痛、意識がおかしいなど、いつもと明らかに違う症状がある場合には、単なる「透析後の疲れ」と自己判断せず、速やかに医療機関へ相談することが大切です。
透析後に毎回疲れるなら透析施設に伝えてみよう
「毎回疲れるけれど、透析をしているのだから仕方ない」
そう思って、医療スタッフには話していない患者さんもいるかもしれません。
しかし、透析後の疲れは医療スタッフに伝えてよい症状です。
実際、日本の調査では「透析後の脱力」や「慢性疲労感」は患者さんが重要と考える症状である一方、医師との認識には差があることも報告されています。
だからこそ、患者さんから具体的に伝えることが大切です。
たとえば、
「透析後は毎回3時間くらい寝ないと動けません」
「最近、翌朝までだるさが残ります」
「透析後に立つとふらつきます」
など、症状だけでなく回復までの時間も伝えてみてください。
医療スタッフは、血圧、体重増加、除水量、ドライウェイト、採血結果、薬、透析条件など、さまざまな情報を確認しながら原因を考えます。
患者さん自身が透析時間や除水量、薬などを変更するのではなく、まずは現在の症状を伝えるところから始めましょう。
「透析をしたら疲れるのは当たり前」と我慢しなくていい
透析後に疲れる、だるい、力が入らないという症状は、多くの透析患者さんが経験しています。
医学的にも「透析後疲労」として研究されている重要な症状です。
一方、その原因はまだ完全にはわかっておらず、透析による体液量や循環動態の変化だけでなく、貧血や睡眠、体調などさまざまな要因が関係している可能性があります。
大切なのは、
「透析をしているから疲れて当然」とすべてを我慢しないことです。
「以前より疲れるようになった」
「透析後は何時間も動けない」
「翌日まで疲れが残る」
このような変化があれば、医師や看護師に伝えてみてください。
自分の疲れ方を知り、それを医療スタッフと共有することも、透析を続けながら生活していくための大切な体調管理の一つです。
看護師からのひとこと
透析室では、患者さんから「今日も疲れたよ」と聞くことがあります。
でも実は、「透析なんだから疲れるのは当たり前」と思って、何も言わずに帰っている方もいるのではないでしょうか。
私たちにとって、
「透析が終わってから、どのくらいで元の状態に戻れるのか」
という情報も大切です。
「帰宅したら3時間くらい寝ています」
「最近は翌日までだるいです」
そんな伝え方で大丈夫です。
毎回つらい、以前より回復するまで時間がかかると感じたら、遠慮せず看護師や医師に話してみてください。
引用・参考文献
- 児玉博俊, 辻明, 高橋和志, 井上達夫. 血液透析患者の透析後疲労. 日本透析医学会雑誌. 2024;57(11):475-483.
DOI:10.4009/jsdt.57.475
(最終閲覧:2026年10月) - 稲熊大城, ほか. 透析患者QoL向上のための重要アウトカムを巡る患者と医師の意識調査. 日本透析医学会雑誌. 2022;55(11):613-624.
(最終閲覧:2026年10月) - Mehrotra R, et al. Managing the symptom burden associated with maintenance dialysis: conclusions from a Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Controversies Conference. Kidney International. 2023.
Kidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO)
(最終閲覧:2026年10月)


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