透析の医療費はいくらかかる?1回・年間の費用と自己負担を軽減する制度を解説【2026年版】

暮らし

「透析を始めることになったら、毎月いくら支払うのだろう」

「週3回も通院して、年間の医療費はどのくらいになるの?」

「年金や給与の中から払い続けられるだろうか」

透析導入の説明を受けたとき、治療そのものと同じくらい、透析にかかる医療費を心配される方は少なくありません。

結論からお伝えすると、透析にかかる医療費の総額は高額ですが、その全額を患者さんが支払うわけではありません。

日本では人工透析を続ける方の自己負担を抑えるために、健康保険に加えて「特定疾病療養受療証」などの制度が設けられています。

条件を満たして手続きを行えば、透析に関する窓口負担は、多くの場合、原則として月1万円までに抑えられます。一定以上の所得がある70歳未満の方では、月2万円となる場合がありますし、自治体によってはその自己負担にも補助が受けられるため、自己負担なく透析を受けられるケースもあります。

この記事では、透析の医療費に含まれるもの、1回・1年間にかかる医療費の目安、患者さんが利用できる負担軽減制度について解説します。

※この記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。制度や所得区分、自治体の助成内容は変更されることがあります。実際の負担額は、加入している健康保険、年齢、所得、通院先、居住地などによって異なります。

この記事でわかること

  • 透析の医療費に含まれるもの
  • 血液透析1回の医療費
  • 透析にかかる年間医療費
  • 実際に患者さんが支払う金額
  • 特定疾病療養受療証とは
  • 高額療養費制度や自治体の助成
  • 医療費控除の対象になる費用

「透析の医療費」には何が含まれている?

患者さんが目にする「透析の医療費」は、透析装置を使う料金だけではありません。

血液透析を安全に行うために必要な、さまざまな医療行為や材料が含まれています。

主なものは次のとおりです。

  • 人工腎臓による透析治療
  • ダイアライザーや血液回路・針・テープ・消毒薬などの医療材料
  • シャントへの穿刺と透析終了後の返血
  • 医師の診察
  • 看護師による観察とケア
  • 臨床工学技士による透析装置の操作・管理
  • 定期的な血液検査
  • 透析中に使用する薬剤
  • 透析液
  • 感染症対策や透析液の水質管理

実際の費用は、透析時間、使用する薬剤、検査、合併症の有無、入院か外来かなどによって変わります。

1回の血液透析はいくらかかる?

血液透析1回にかかる医療費の総額は、一般に数万円程度です。

日本国内の医療費は診療報酬という制度によって、医療行為ごとに点数(値段)が決められ、原則として1点10円で計算されます。
透析時間が4時間以上5時間未満の場合、「人工腎臓」という治療部分だけでも、おおむね2万円前後に相当します。ここへ診察、検査、薬剤、材料、各種加算などが加わり、約3万~5万円程度が1回の外来透析にかかる費用になります。(なお1回の総医療費は施設や患者さんの治療内容・状態によって異なります。)

ただし、この金額は医療機関が保険者と患者さんへ請求する「医療費全体」の目安です。ご自身でお支払いする場合を想定すると、全額自己負担で支払った場合の金額になります。

患者さんが窓口で毎回3万~5万円を支払うという意味ではありませんので、安心してください。

透析の年間費用はいくら?

週3回血液透析を受けた場合、1年間の透析回数はおよそ156回です。

仮に1回の総医療費を3万~5万円程度として計算すると、透析治療だけでも年間数百万円規模になります。

厚生労働省の資料では人工透析にかかる医療費は、患者さん1人あたり月額約40万円と示されています。単純計算では年間約480万円となり、以前から「年間約500万円」が一つの目安として示されてきました。

ただし、これは透析医療にかかる総医療費です。

健康保険や負担軽減制度を使うため、患者さんが年間約500万円を自分で支払うわけではありません。

実際の自己負担はいくらになる?どうやって軽減される?

通常、保険診療では年齢や所得に応じて医療費の1~3割を患者さんが負担します。

しかし、人工透析は長期間にわたって高額な治療を継続する必要があるため、「特定疾病に係る高額療養費の特例」の対象となっていて、その自己負担額は大幅に減額されます。その軸となる特定疾病療養受療証について解説します。

特定疾病療養受療証を利用する

人工透析を受ける慢性腎不全の方は加入している健康保険へ申請し、特定疾病療養受療証の交付を受けることができます。

受療証を医療機関へ提示すると対象となる透析医療について、1か月の窓口負担上限は原則として以下の金額になります。

対象1か月の自己負担上限
人工透析を受けている慢性腎不全の方1万円
標準報酬月額53万円以上の70歳未満の被保険者・被扶養者2万円

この限度額は、原則として医療機関ごと、入院・外来ごとに適用されます。複数の医療機関を受診した場合や、同じ月に入院と外来の両方を利用した場合は、それぞれで支払いが発生することがあります。

また、これらの特例は患者さん自身の申請によって認定されます。協会けんぽでは、受療証の効力を過去の月へさかのぼらせることができないと案内しているため、透析開始が決まったら早めに手続きをしないと自己負担が発生する可能性があるため注意が必要です。

透析患者さんが利用できる主な負担軽減制度

透析患者さんが利用できる制度は一つだけではありません。代表的な制度を紹介します。

健康保険と特定疾病療養受療証

透析に関する自己負担を、原則として月1万円または2万円までに抑える制度です。

まずは勤務先の健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険、後期高齢者医療制度など、加入している保険者へ申請方法を確認してください。

自治体独自の医療費助成

都道府県や市区町村によっては独自の重度障害者医療費助成などにより、特定疾病療養受療証で残った自己負担をさらに助成する制度があります。

助成内容、所得制限、年齢要件、申請先は自治体ごとに異なりますので、透析を始めたら必ず市区町村の障害福祉・医療費助成窓口に確認してください。

引っ越しをすると制度の内容が変わる可能性があるため、転居前後に市区町村の障害福祉・医療費助成窓口へ確認しましょう。

高額療養費制度

1か月に支払った医療費が所得区分ごとの限度額を超えた場合、超過分が支給される制度です。

透析については特定疾病の特例が優先されることが多いものの、透析以外の治療、入院、手術、他の医療機関での診療などが重なった場合には、高額療養費制度が関係することがあります。2026年には、高額療養費制度へ年間上限を設けることなどを含む制度改正が公表されているため、適用時期や金額は加入先へ確認してください。

身体障害者手帳

腎臓機能障害の程度が認定基準に該当する場合、身体障害者手帳を申請できます。

透析をしている方は腎臓機能障害の認定基準を満たしていますので、身体障害者手帳の認定が通らないことはまずありません。

注意したい点は、身体障害者手帳を取得しただけで、すべての医療費が自動的に無料になるわけではないことです。

身体障害者手帳は、透析の通院にかかる公共交通機関の運賃やタクシー代等、さまざまな生活に必要な費用への支援が受けられます。

詳細は、身体障害者手帳手帳を申請・受療した際に市区町村の障害福祉・医療費助成窓口へ確認してください。

自立支援医療

条件を満たせば、自立支援医療の「更生医療」や自治体の障害者医療費助成などを利用できる場合があります。

更生医療は、身体障害者手帳を持つ18歳以上の方が、障害を軽減するために必要な医療を受ける際の自己負担を軽減する制度です。人工透析療法も対象となり得ますが、所得や指定医療機関などの条件があります。

医療費控除は受けられる?

医療費控除は、医療費そのものを無料にする制度ではありません。

1年間に実際に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告によって所得から差し引き、所得税や住民税の負担を軽くする仕組みです。

医療費控除額は、原則として次のように計算します。

実際に支払った医療費-保険金などで補てんされた金額-10万円=医療費控除を受けられる金額

その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく、総所得金額等の5%を差し引きます。控除額の上限は200万円です。

透析患者さんの場合、次の費用が対象になる可能性があります。

  • 医療機関や薬局で実際に支払った自己負担額
  • 診療や治療のために必要な電車・バス代
  • 病状などにより公共交通機関の利用が難しい場合のタクシー代
  • 医師の指示で購入した一定の医療用品
  • 状況によって必要となった付き添いの交通費
  • 入院にかかる費用

一方、自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車料金は、原則として医療費控除の対象になりません。公共交通機関の通院費は領収書がない場合もあるため、日付、病院名、経路、金額を記録しておきましょう。

なお、特定疾病療養受療証や高額療養費、民間保険の給付金などで補てんされた部分は、実際に支払った医療費から差し引いて計算します。

注意したい“透析以外にかかる費用”

公的制度で透析の自己負担が軽減されても、通院生活には医療費以外の支出が生じることがあります。

たとえば

  • 電車・バス・タクシーなどの交通費
  • 自家用車のガソリン代や駐車料金
  • 透析日の食事代
  • 入院時の差額ベッド代
  • 寝衣や日用品
  • 介護タクシーや付き添いサービス
  • 仕事を休むことによる収入への影響

などです。

交通費や生活上の負担も含めて困っている場合は、利用できる送迎サービス、障害福祉サービス、介護保険、自治体の交通費助成などがないかかかりつけ医療機関や市区町村の障害福祉・医療費助成窓口に相談してみましょう。

手続きは誰に相談すればよい?

制度は種類が多く、加入している保険や自治体によって内容も異なります。

一人ですべてを調べる必要はありません。

次の窓口へ相談できます。

  • 透析施設の医療ソーシャルワーカー
  • 病院の患者相談窓口
  • 加入している健康保険の窓口
  • 市区町村の国民健康保険・障害福祉担当
  • 後期高齢者医療広域連合
  • 税務署や税理士への医療費控除の相談

透析開始前であっても「医療費が心配です」と伝えてかまいません。

各種助成制度の申請が遅れると負担軽減を受けられる時期が遅くなりますし、最悪の場合自己負担が発生する可能性があります。透析開始の説明を受けた段階で、早めに相談しましょう。

よくある質問

透析へ行くたびに1万円を支払うのですか?

いいえ。

特定疾病療養受療証による1万円または2万円は、対象となる医療についての1か月の上限額です。透析1回ごとの負担額ではありません。

透析以外の病気の治療も月1万円に含まれますか?

すべての治療が含まれるわけではありません。

特定疾病療養受療証の対象は、人工透析を実施している慢性腎不全に関する療養です。

別の病気や別の医療機関での治療には、通常の自己負担や高額療養費制度が適用されることがあります。

身体障害者手帳を取れば医療費は無料になりますか?

身体障害者手帳は医療費を無料にする制度ではありません。

手帳の等級、所得、自治体の助成制度などによって負担額は異なります。手帳の取得と医療費助成の申請は、別の手続きとなることがあります。

透析の通院交通費は医療費控除になりますか?

治療のために必要な電車やバスなどの公共交通機関の費用は、対象になる可能性があります。

自家用車のガソリン代や駐車料金は、原則として対象外です。

看護師からひとこと

透析が必要だと説明されたとき、「治療費を払い続けられるのだろうか」と不安になるのは自然なことです。

実際の透析医療には高額な費用がかかりますが、日本には患者さんの自己負担を軽減するための制度があります。

ただし、制度の多くは自動的に適用されるのではなく、申請が必要です。

手続きの名前や書類が難しく感じられたら、一人で抱え込まず、病院の医療ソーシャルワーカーや相談員へ声をかけてください。

医療費、仕事、通院方法、家族への負担も、透析生活を続けるうえで大切な相談内容です。

今日からできること

透析を始める予定の方は、次の3点を確認してみましょう。

  • 特定疾病療養受療証を申請したか
  • 自治体の医療費助成を利用できるか
  • 医療ソーシャルワーカーへ相談できるか

すでに透析を受けている方は、医療費や通院交通費の領収書・記録を保管しておくと、医療費控除の確認に役立ちます。

まとめ

  • 血液透析1回の総医療費は、治療内容によって数万円程度になる
  • 人工透析の総医療費は、1人あたり月約40万円、年間約500万円が目安
  • 患者さんが総医療費の全額を支払うわけではない
  • 特定疾病療養受療証を利用すると、対象となる透析医療の負担は原則月1万円
  • 一定以上の所得がある70歳未満の方では月2万円になる場合がある
  • 自治体の障害者医療費助成などで、さらに負担が軽減されることがある
  • 医療費控除では、自己負担した医療費や一定の通院交通費が対象になり得る
  • 制度は複雑なので、早めに医療ソーシャルワーカーへ相談することが大切

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