「透析は家族にうつるのでしょうか?」
「親が透析をしていると、自分や子どもも透析になりますか?」
ご家族が透析治療を受けていると、このような不安を感じる方は少なくありません。
結論からお伝えすると、透析そのものが人にうつることはなく、透析という治療が遺伝することもありません。
なぜなら透析は病気を治療する手段・方法だからです。
しかし、透析が必要になった原因の病気の中には、親子やきょうだいなど血縁関係の方の場合遺伝する可能性がある病気があります。一方で、糖尿病や高血圧など生活習慣が大きく関係する病気もあり、「親が透析だから必ず子どもも透析になる」と断言できるわけではありません。
この記事では、透析がうつるのか、遺伝するのかという疑問にお答えするとともに、家族が気をつけたいポイントや、遺伝性腎疾患についてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 透析は人にうつらないこと
- 透析そのものは遺伝しないこと
- 遺伝する可能性がある腎臓の病気
- 家族に透析患者さんがいる場合に気をつけたいこと
- 不安があるときに受診を検討したいケース
透析は人にうつることはありません
結論からお伝えすると、透析は人にうつる病気ではありません。
透析は病気ではなく、腎臓の働きが低下したときに行う治療です。そのため、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスのように人から人へ感染する(うつる)ことはありません。
家族と一緒に生活することで透析がうつることもありません。
例えば
- 同じ家で暮らす
- 同じ食卓で食事をする
- 同じお風呂を使う
- 洗濯物を一緒に洗う
- 食器を共有する
これらによって透析がうつることはありません。
そのため、ご家族が透析を受けているからといって、日常生活で特別に距離を置く必要はありません。
感染症と透析は別の問題です
「透析はうつらない」と聞いて、「透析室では感染対策をしているのはなぜ?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
透析室で感染対策が行われているのは、透析が感染するからではありません。
透析では血液を体の外に取り出して治療を行うため、B型肝炎やC型肝炎などの血液を介して感染する病気やまだ知られていない血液から感染する可能性がある病気には十分な注意が必要です。そのため、透析施設では器具の管理や感染予防策など、厳格な感染対策が行われています。
つまり、透析室の感染対策の対象は「透析」ではなく「感染症」なのです。
透析そのものは遺伝しません
「父親が透析をしているから、自分も将来透析になるのでしょうか?」
このような相談をご家族からうかがうことがあります。
結論として、透析という治療自体が遺伝することはありません。
透析は、腎臓の働きが大きく低下した結果として必要になる治療です。そのため、遺伝するかどうかは「透析」ではなく、「透析の原因となった病気」によって異なります。
例えば、糖尿病や高血圧が原因で透析になった方もいれば、遺伝性の腎臓病が原因で透析になった方もいます。
そのため、「親が透析だから」という理由だけで、お子さんが必ず透析になるわけではありません。
大切なのは、透析になった原因を知ることです。
遺伝する可能性がある代表的な腎臓の病気
透析の原因となる病気の中には、遺伝する可能性があるものがあることはご存知でしょうか?

ここでは代表的な病気を紹介します。
多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん・ADPKD)

多発性嚢胞腎は腎臓の中にたくさんの嚢胞(液体が入った袋)ができてしまい、正常に働ける糸球体の数が減った結果徐々に腎機能が悪くなってしま病気です。
日本でも比較的多い遺伝性腎疾患で、透析が必要になる原因の一つとして知られています。
この病気は常染色体顕性(優性)遺伝で遺伝することが多く、親が患者さんの場合、子どもに受け継がれる可能性は一般的に約50%とされています。
家族に多発性嚢胞腎の方がいる場合は、必要に応じて超音波検査などを受けることをおすすめします。
Alport(アルポート)症候群
Alport症候群は、生まれつき腎臓の糸球体を支えるコラーゲンに異常がある遺伝性疾患です。
小さなころから血尿やたんぱく尿が続き、病気の進行にともない腎機能が悪くなることがあります。また、難聴や目の異常を伴う場合もあります。
頻度は高くありませんが、若い年齢で腎機能障害がみられる場合には、この病気が原因となっていることがあります。
Fabry(ファブリー)病
Fabry病は、体内で特定の酵素が不足することで、さまざまな臓器に物質が蓄積する遺伝性疾患です。
腎臓だけでなく、心臓や脳にも影響を及ぼすことがあり、進行すると透析が必要になることがあります。
近年は治療法が進歩しており、早期診断・早期治療が重要とされています。
糖尿病や高血圧は遺伝するのでしょうか?
透析の原因として最も多い病気は、糖尿病や腎硬化症(高血圧などによる腎障害)です。
これらの病気について、「遺伝するのですか?」という質問をいただくことがあります。
糖尿病や高血圧は、病気そのものが遺伝するというよりも、「なりやすい体質」が遺伝すると考えられています。
さらに、家族で似た食生活や生活習慣を送ることも影響します。
そのため、家族に糖尿病や高血圧の方がいる場合は
- 塩分を控えた食事
- 適度な運動
- 肥満の予防
- 禁煙
- 定期的な健康診断
などを心がけることが、腎臓を守るためにも透析を遠ざけるためにも大切です。
親が透析なら子どもも透析になりますか?
「父が透析をしているので、自分も将来透析になるのでしょうか?」
「母が透析をしているので、自分や子どもにも遺伝するのではと心配です。」
このような不安を抱える方は少なくありません。
しかし、親が透析を受けているからといって、子どもが必ず透析になるわけではありません。
透析は「治療」の名前であり、重要なのは透析が必要になった原因となる病気です。
例えば
- 糖尿病が原因だったのか
- 高血圧による腎障害だったのか
- 慢性糸球体腎炎だったのか
- 多発性嚢胞腎などの遺伝性疾患だったのか
によって、将来透析が必要になるのかなどご家族への影響は大きく異なります。
特に糖尿病や高血圧が原因の場合は、生活習慣を見直すことで腎臓病の発症や進行のリスクを減らせる可能性があります。
一方、多発性嚢胞腎などの遺伝性疾患では、一定の確率で家族にも同じ病気が見つかることがあります。そのため、ご家族に遺伝性の腎臓病の方がいる場合には早めに医療機関へ相談することが大切です。
家族に透析患者さんがいる方が気を付けたいこと
透析患者さんが家族にいるからといって、必要以上に心配する必要はありません。
しかし「ご自身の腎臓の状態を知る」ことはとても大切です。
腎臓の病気は初期には自覚症状がほとんどありません。気づかないまま進行し、症状が出たときには腎機能が大きく低下していることもあります。
だからこそ、定期的な健康診断を受けることが重要です。
とくに次の項目は確認しておきましょう。
- 尿たんぱく
- 尿潜血
- 血清クレアチニン
- eGFR(推算糸球体ろ過量)
- 血圧
- 血糖値(HbA1cを含む)
これらは、一般的な地域・職場の健康診断や人間ドックで調べることができます。
結果に異常があった場合は、早い段階で治療を始めると腎機能が悪くなること防げる可能性があります。次の項目で紹介する内容に心当たりが、ある方はぜひ腎臓内科に相談しましょう。
このような場合は腎臓内科へ相談しましょう
腎臓内科とは、腎臓の病気を専門に診断・治療をおこなう科です。
健康診断で異常が指摘された方や、家族に透析患者さんがいる方、以下にあげた自覚症状がある場合には腎臓内科へ相談することをおすすめします。
- 家族に多発性嚢胞腎と診断された方がいる
- 健康診断で尿たんぱくや血尿を指摘された
- eGFRが低いと言われた
- 若い頃から血尿が続いている
- 腎臓病の家族歴が複数ある
- 高血圧や糖尿病があり、腎機能が気になる
「まだ症状がないから大丈夫」と思っていても、腎臓病は静かに進行することがあります。
不安がある場合は、一度相談しておくことで安心につながります。
よくある質問(FAQ)
Q. 透析患者さんと一緒に生活しても大丈夫ですか?
はい、大丈夫です。
透析は感染する病気ではありません。
同じ家で生活したり、一緒に食事をしたり、お風呂や洗濯を共有したりしても、透析がうつることはありません。
Q. 親が透析をしていると、自分も透析になりますか?
必ず透析になるわけではありません。
原因となった病気によって異なります。
遺伝性の病気もありますが、多くの場合は生活習慣や加齢など、さまざまな要因が関係しています。
Q. 兄弟や子どもも検査を受けたほうがよいですか?
遺伝性腎疾患が疑われる場合は、医師と相談しながら検査を受けることが勧められます。
一方で、原因が糖尿病や高血圧である場合は、定期的な健康診断を受けることが重要です。
Q. 遺伝性腎疾患は予防できますか?
遺伝子そのものを変えることはできません。
しかし、早期発見・早期治療によって腎機能の低下を遅らせられる病気もあります。
ご家族の方が遺伝性の腎臓病の方は「自分は大丈夫」と、ご自身の腎臓を過信せずに腎臓内科へ相談しましょう。
まとめ
透析について「うつる」「遺伝する」という不安を感じる方は少なくありません。
しかし、透析そのものが人から人へうつることはなく、透析という治療が遺伝することもありません。
一方で、透析が必要になった原因の病気の中には、多発性嚢胞腎などのように遺伝するものがあります。
また、糖尿病や高血圧は体質の影響を受けることがありますが、生活習慣を整え、定期的に健康診断を受けることでリスクを減らせる可能性があります。
ご家族に透析患者さんがいるからといって、必要以上に不安になる必要はありません。
まずは家族の病気について知り、自分自身の健康状態を定期的に確認することが、腎臓を守る第一歩になります。
看護師からのひとこと

透析室で働いていると、「家族が透析だから、自分も将来透析になりますか?」という質問を受けることがあります。
ご家族が透析を受けている姿を見ていると、不安になるのはとても自然なことです。
実際には透析という治療が人にうつったり、親から子へ遺伝したりすることはありません。大切なのは、「なぜ透析が必要になったのか」という原因を知ることです。
もしご家族に遺伝性腎疾患がある場合や、健康診断で尿たんぱく・血尿・腎機能の異常を指摘された場合は、早めに腎臓内科へ相談してみてください。
「何もなかった」と確認できることも、安心につながります。そして、もし早い段階で異常が見つかったとしても、適切な治療や生活習慣の改善によって腎臓を守れる可能性があります。
引用文献・参考文献
- 日本腎臓学会. CKD診療ガイドライン2023. 東京医学社, 2023.
- 日本透析医学会. わが国の慢性透析療法の現況(最新年版).
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO). KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney International. 2024.
- Chebib FT, Torres VE. Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease: Core Curriculum 2016. American Journal of Kidney Diseases. 2016;67(5):792-810.
- Gansevoort RT, et al. Autosomal dominant polycystic kidney disease. Nature Reviews Disease Primers. 2016;2:16004.
- Kashtan CE. Alport Syndrome. GeneReviews®. University of Washington, Seattle. (随時更新)
- Germain DP. Fabry disease. Orphanet Journal of Rare Diseases. 2010;5:30.
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIDDK). Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease (ADPKD).


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