
透析を受けていると、定期的に採血をする機会があります。
「また採血するの?」
「透析患者は毎月、血液検査が必要なの?」
「先週も採血したのに、どうしてまた採るの?」
このように疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
透析患者さんにとって血液検査は、体の状態だけでなく、透析が十分に行えているか、貧血や電解質の異常がないか、薬や透析条件を変更する必要がないかなどを確認するための大切な検査です。
そのため、維持透析では定期的に血液検査が行われます。
ただし、「透析患者さんなら全員、毎月まったく同じ回数・同じ項目を検査する」というわけではありません。
採血の頻度や検査項目は、患者さんの状態や治療内容、透析施設の方針などによって異なります。
この記事では、透析患者さんが定期的に血液検査をする理由や採血の頻度、毎回どのようなことを確認しているのかについて、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 透析患者さんが定期的に血液検査をする理由
- 血液検査は毎月必要なのか
- 採血は月に何回くらい行うのか
- 毎回同じ検査項目を調べるのか
- 透析前と透析後に採血する理由
- 血液検査以外に行われる定期検査
透析患者さんはなぜ毎月のように血液検査をするの?
透析患者さんの血液検査は、単に「異常がないか」を調べるためだけに行うものではありません。
血液検査の結果は、日々の透析治療を調整するための重要な情報になります。
体重や血圧だけではわからない変化を確認するため
透析では、毎回の治療前後に体重や血圧を測定します。
これらも大切な情報ですが、体重や血圧だけでは体の中で起きている変化をすべて把握することはできません。
たとえば、
- カリウムが高くなっていないか
- リンが高くなっていないか
- 貧血が進んでいないか
- 栄養状態に変化がないか
といったことは、血液検査でしか確認できません。
また、自覚症状がほとんどなくても、検査値が変化していることもあります。
そのため体調が安定しているように見える場合でも、定期的に血液検査を行うことが大切です。
透析が十分にできているか確認するため
血液透析では、血液中にたまった老廃物や水分などを取り除きます。
しかし、「週3回、1回4時間透析しているから十分老廃物が除去できている」と回数や時間だけで判断することはできません。
血液検査では、尿素窒素(BUN)などを確認し、必要に応じて透析前後の値からKt/VやURRといった指標を用いて、透析がどの程度行われているかを評価します。
透析時間や血流量、ダイアライザ、体格などによっても透析効率は変わります。
そのため、血液検査は現在の透析条件が患者さんに合っているかを確認する材料にもなります。
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貧血・電解質・栄養状態などを確認するため
腎臓には、尿をつくる以外にもさまざまな働きがあります。
腎機能が低下すると、貧血やミネラル代謝の異常などが起こりやすくなるため、透析だけでなく薬による治療が必要になることもあります。
血液検査では、
- ヘモグロビン
- カリウム
- リン
- カルシウム
- アルブミン
など、さまざまな項目を確認します。
こうした数値の変化を定期的に追うことで、治療の調整につなげます。
薬や透析条件を調整するため
血液検査の結果は、薬や透析条件を調整するときにも利用されます。
たとえば、貧血の状態を確認しながら治療薬を調整したり、リンの値を確認しながら食事や薬について検討したりします。
つまり、定期採血は「検査をすること」自体が目的ではありません。
検査結果を次の治療につなげることが目的なのです。
透析患者さんの血液検査は毎月必要?
透析患者さんでは、定期的な血液検査が重要です。
厚生労働省の「慢性維持透析患者外来医学管理料」でも、安定した慢性維持透析患者について、特定の検査結果に基づいて計画的な治療管理を行う仕組みが設けられています。対象となる検査には、末梢血液一般検査、アルブミン、尿素窒素、クレアチニン、カリウム、カルシウム、無機リンなど、透析患者さんの管理でよく使われる項目が含まれています。
ただし、ここで注意したいのが、
「毎月検査することがある」=「全員が毎月まったく同じ検査を同じ回数受ける」ではない
ということです。
採血頻度はすべての透析施設で同じではない
実際の採血頻度は、透析施設によって異なります。
また、同じ施設に通っていても、患者さんの状態や治療内容によって検査項目や追加検査の有無が変わることがあります。
そのため、
「透析患者さんは必ず月○回採血する」
と一律に考えるのではなく、定期的な検査を基本として、その人に必要な検査が組み合わされていると考えるとわかりやすいでしょう。
透析の採血は月に何回くらいする?
透析施設では、月1〜2回程度を基本として採血を行っているケースがあります。
ただし、これはすべての透析患者さんに共通する決まりではありません。
患者さんの状態や施設の方針などによって異なります。
また、月に複数回採血をする場合でも、毎回まったく同じ目的で採血しているとは限りません。
たとえば、ある採血では透析前後の血液を調べ、別の日には透析前だけ採血するといった場合があります。
必要に応じて追加の採血をすることもある
定期採血とは別に、追加で血液検査を行うこともあります。
たとえば、
- 検査値が大きく変化した
- 薬を変更した
- 貧血治療を調整した
- 発熱や体調不良がある
- 入院や退院などで状態が変化した
といった場合です。
いつもより採血が多いと、「何か悪い病気が見つかったのかな」と心配になるかもしれません。
しかし、採血回数が増えたからといって、必ずしも状態が悪化したという意味ではありません。
治療を変更したあとの効果や安全性を確認するために検査を追加することもあります。
気になる場合は、「今回は何を確認するための採血ですか?」とスタッフに尋ねてみてもよいでしょう。
毎回同じ血液検査をしているの?
採血をするたびに、すべて同じ項目を調べているとは限りません。
検査項目によって、確認する目的や適切な測定頻度が異なるからです。
定期的に確認する検査
透析患者さんでは、たとえば次のような項目が確認されます。厚生労働省が示す慢性維持透析患者外来医学管理料の対象にも、これらを含む多くの血液検査が含まれています。
ただし、検査値は1項目だけを見て判断するものではありません。
複数の検査結果やこれまでの推移、体重、血圧、症状などを合わせて評価します。
数か月ごとなどに確認する検査もある
検査によっては、毎回ではなく一定の間隔で確認したり、患者さんの状態に応じて測定したりします。
代表的なものとして、
- PTH
- フェリチン
- TSATなど鉄代謝に関連する項目
などがあります。
たとえばCKD-MBDでは、リン・カルシウム・PTHなどを組み合わせながら管理していきます。日本透析医学会はCKD-MBDに関する診療ガイドラインを公開しており、検査値の評価は治療方針を考える重要な要素となっています。
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毎月の血液検査では何を確認している?
ここからは、透析患者さんでよく確認される検査について簡単に見ていきましょう。
BUN・クレアチニン|老廃物や透析の状態
BUN(尿素窒素)やクレアチニンは、透析患者さんの血液検査でよく目にする項目です。
特にBUNは、透析前後の変化から透析効率を評価するときにも利用されます。
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カリウム|高カリウム血症がないか確認
カリウムは、筋肉や神経、心臓の働きに関係する電解質です。
腎機能が低下すると体外へ排泄しにくくなるため、透析患者さんでは重要な検査項目のひとつです。
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リン・カルシウム|骨やミネラル代謝を確認
腎機能が低下すると、リンやカルシウム、PTHなどのバランスに異常が生じることがあります。
そのため、これらの数値を定期的に確認しながら管理していきます。
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ヘモグロビン|貧血を確認
腎機能が低下すると、腎性貧血が起こりやすくなります。
ヘモグロビンは、貧血の程度や治療効果を確認するための重要な指標です。
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アルブミン|栄養状態などを確認
アルブミンは血液中に多く存在するたんぱく質です。
栄養状態を考える際の重要な指標のひとつですが、炎症などさまざまな要因によって変化するため、アルブミンだけで栄養状態を判断するわけではありません。
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透析前と透析後の両方で採血することがあるのはなぜ?
透析の採血では、透析前だけではなく、透析後にも血液を採ることがあります。
これは、透析によって血液中の物質がどのくらい減ったのかを確認するためです。
透析前の採血で確認すること
透析前の採血では、透析を始める前の体内の状態を確認します。
カリウムやリン、BUNなどがどの程度になっているのかを把握し、日々の治療や食事管理などを考える材料にします。
透析後の採血で確認すること
透析後には、透析によって老廃物がどの程度除去されたかを確認するために採血することがあります。
特にBUNの透析前後の値は、URRやKt/Vなどの透析効率を評価するときに利用されます。
そのため、
「今日はどうして透析が終わってからも採血するの?」
と思ったときは、透析効率を確認するための採血である可能性があります。
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血液検査がいつもより増えることがあるのはなぜ?
いつもは決まった日に採血しているのに、突然追加の血液検査をすると、不安になる方もいるでしょう。
しかし、追加採血にはさまざまな理由があります。
検査値に大きな変化があったとき
たとえば、カリウムなどの数値が大きく変化した場合には、再度採血して数値を確認することがあります。
貧血治療などを変更したとき
貧血治療を開始・変更した場合には、治療効果などを確認するために検査が追加されることがあります。
薬を開始・変更したとき
薬によっては、効果や副作用などを確認するために血液検査が必要になることがあります。
発熱など体調に変化があったとき
発熱や強いだるさなどがある場合には、感染症や炎症などを確認するため、通常の定期採血とは別に検査を行うことがあります。
つまり、採血の回数が増えたからといって、必ずしも病状が悪くなったということではありません。
血液検査以外にはどんな定期検査をする?
透析患者さんが受ける定期検査は、血液検査だけではありません。
施設や患者さんの状態によって異なりますが、必要に応じて次のような検査が行われます。
胸部レントゲン
心臓の大きさや肺の状態などを確認します。
体液量を評価するときの参考になることもあります。
心電図・心エコー
透析患者さんでは心血管系の合併症にも注意が必要です。
必要に応じて心電図や心エコーなどが行われます。
シャントエコー
シャントの血流や狭窄の有無などを確認するため、シャントエコーが行われることがあります。
ただし、すべての患者さんに同じ間隔で行うものではなく、シャントの状態などによって検査時期は異なります。
CT・超音波・骨密度など
患者さんの年齢、原疾患、合併症などに応じて、CTや超音波、骨密度などの検査が行われることもあります。
「透析患者だから全員この検査を毎年受ける」と一律に決まっているわけではありません。
血液検査の結果は「1回の数値」だけで判断しない
検査結果を受け取ると、基準値から外れている数字が気になることがあります。
しかし、透析患者さんの検査結果を見るときは、1回の数字だけではなく、これまでの変化を見ることが大切です。
前回までの数値との変化を見る
たとえば、
「カリウムが前回より上がっている」
「ヘモグロビンが少しずつ下がっている」
など、数値の推移からわかることがあります。
そのため医療者は、今回の検査値だけでなく、過去の結果と比較しながら評価します。
食事・水分・薬・体調なども検査値に影響する
検査値はさまざまな要因によって変化します。
食事内容や薬、体調などが影響する項目もあります。
「数値が高かった=食事管理ができていない」などと単純に判断できるものではありません。
気になる検査値は医療スタッフに確認する
検査結果を見て気になる数値があれば、自分だけで判断せず、主治医や看護師、管理栄養士などに確認してみましょう。
「前回と比べてどう変わったのか」
「なぜこの数値が変化したのか」
という視点で確認すると、自分の体の状態を理解しやすくなります。
透析の血液検査についてよくある質問
Q. 透析患者さんは必ず月2回採血するの?
必ず月2回と決まっているわけではありません。
月1〜2回程度を基本としている施設もありますが、採血頻度は施設の方針や患者さんの状態、治療内容などによって異なります。
Q. 毎回同じ検査項目を調べるの?
必ずしも同じではありません。
定期的に確認する項目のほか、一定の間隔で測定する項目や、必要なときに追加する項目があります。
Q. 透析後にも採血するのはなぜ?
透析前後のBUNなどを比較して、透析によって老廃物がどの程度除去されたかを確認するために行うことがあります。
Kt/VやURRなどの透析効率を評価するときにも利用されます。
Q. 採血が増えたのは状態が悪くなったから?
必ずしもそうではありません。
検査値を再確認したり、薬や治療内容を変更したあとの効果を確認したりするために追加で採血することもあります。
理由がわからず不安な場合は、医療スタッフに確認してみましょう。
まとめ|定期的な血液検査は透析治療を調整するために大切
透析患者さんにとって血液検査は、体の状態を確認するだけでなく、現在の治療が適切かを考えるための大切な情報です。
維持透析では定期的に血液検査が行われますが、すべての患者さんが同じ回数、同じ検査項目を調べるわけではありません。
患者さんの状態や治療内容、透析施設の方針などによって、採血の頻度や検査項目は異なります。
また、採血の回数が増えたからといって、必ずしも状態が悪化したとは限りません。治療変更後の確認などを目的として追加されることもあります。
検査結果を見るときには、1回の数値だけを見るのではなく、「前回からどう変化しているのか」という視点も大切です。
定期的な血液検査を、自分の体の状態や透析治療について知る機会として活用していきましょう。
引用・参考文献
- 日本透析医学会.慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン(2025年改訂版).日本透析医学会雑誌.2026;59(4):127-224.
日本透析医学会「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン(2025年改訂版)」 - 日本透析医学会.2015年版 日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」.日本透析医学会雑誌.2016;49(2):89-158.
日本透析医学会「2015年版 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」 - 厚生労働省.診療報酬点数表「B001-15 慢性維持透析患者外来医学管理料」.
厚生労働省「慢性維持透析患者外来医学管理料」 - 日本透析医学会.ガイドライン・提言.
日本透析医学会「ガイドライン・提言」
※本記事は上記の学会ガイドライン・公的資料などを参考に作成しています。検査項目や検査頻度は、患者さんの状態や治療内容、医療機関の方針などによって異なります。


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