「透析を始める前に、シャントを作りましょう」
医師からそう説明されると、多くの方が不安になります。
「シャントって何?」
「腕を切る手術なの?」
「腕から血管が出てるの?」
「痛いのかな……。」
「仕事や家事はできる?」
「失敗することはある?」
シャントなんて言葉、いままで耳にしたことはありますか?だからこそ、分からないことばかりです。
しかし、シャントは血液透析を安全に続けるために欠かせない『命綱』です。
シャントがしっかり機能していることで、十分な血液を体の外に取り出し、血液装置で体の中の老廃物や余分な水分を取り除くことができます。
この記事では、これからシャント手術を受ける方へ向けて、
- シャントとは何か
- なぜ必要なのか
- 手術の流れ
- 術後の生活
- 長持ちさせるコツ
まで、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- シャントとは
- なぜシャントが必要なのか
- 手術の流れ
- 手術は痛いのか
- 入院期間
- 手術後に気を付けること
- シャントを長持ちさせる方法
シャントとは?
シャントとは、血液透析を行うために作る専用の血管です。
正確には内シャントと呼ばれ、多くの場合は手首や肘に近い利き手と反対側の腕で手術を行います。
通常、腕の動脈と静脈は別々に流れています。
シャント手術は、手首に近い動脈と静脈をつなぎ合わせます。
すると、動脈から勢いよく流れてくる血液によって静脈が少しずつ太く丈夫になり、針を刺したり透析に必要な十分な血流を安全に体の外に取り出せるようになります。
なぜシャントが必要なの?
ときどき「シャントを作らず、動脈に直接針を刺したらいいんじゃないの?」と聞かれることもあります。
腕を見た時に見える青い血管は静脈です。動脈はもっと皮膚の奥に流れていますから、針を刺すのは難しく、また動脈に針を刺すほうが静脈に針を刺すよりも痛みを伴います。
また、透析には採血よりも太い針を使います。腕に見える青い血管(静脈)は細すぎて刺すのがとても難しくなります。そして、透析では、1回の治療で約200〜250mL/分もの血液を体の外へ送り出します。
普通の静脈では、この大量の血液を流すことができません。
さらに週3回、毎回2本の針を刺さなくてはなりませんから、透析専用の太い血管「シャント」が必要になるのです。
シャントがあることで、
- 十分な血液量を確保できる
- 毎回安全に穿刺できる
- 長期間透析を続けられる
というメリットがあります。
もしシャントがなければ、十分な透析ができず、体に老廃物が残ってしまいます。
つまり、シャントは透析そのものを支える大切な血管なのです。
シャント手術とはどんな手術?
シャント手術は、多くの病院で局所麻酔で行います。
局所麻酔は意識はありますが、腕だけに効くように使うため、手術中の痛みはほとんどありません。
手術時間は約30〜90分です。
日帰りで行う施設もあれば、一泊〜二泊程度入院する施設もあります。
病院によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
手術後は傷口を保護しながら帰宅し、外来で経過を確認します。
シャント手術は痛い?
患者さんから最も多く聞かれる質問です。
実際には、一番痛みを感じるのは麻酔の注射です。
その後は麻酔が効いているため、手術中に強い痛みを感じることは少ないでしょう。
「押されている感じ」
「腕を触られている感じ」
と表現される方が多くいます。
手術後は傷の痛みや腕の違和感がありますが、数日から1週間ほどで徐々に落ち着いていくことが一般的です。
もちろん、痛みの感じ方には個人差があります。
痛みが強い場合は我慢せず、手術を受けた医師や医療機関へ相談しましょう。
シャントはすぐ使える?
いいえ。
手術が終わった直後は、まだ透析では使えません。
動脈につながった静脈が十分に太くなるまで待つ必要があります。
これをシャントの発達といいます。
一般的には2〜4週間程度で使用できるようになりますが、血管の状態や病気によっては、もう少し時間がかかることもあります。
そのためシャントの手術は透析を始める直前ではなく、少し余裕を持っておこなわれるのが一般的です。
定期的に医師や臨床工学技士が血流や血管の太さを確認し、シャントが使用できるタイミングを判断します。
手術後に気を付けること
シャントを長持ちさせるためには、術後の生活も大切です。特に次のことに注意しましょう。
腕を強く圧迫しない
腕枕や腕時計、きつい服などで長時間圧迫すると、血流が悪くなることがあります。
重い荷物を持ちすぎない
術後しばらくは重い荷物を持つことを控えましょう。
採血や血圧測定をしない
シャントのある腕では採血や点滴、血圧測定を避けます。
病院を受診するときは、「シャントがあります」と必ず伝えましょう。
傷口を清潔に保つ
傷が治るまでは、医師の指示に従って入浴やシャワーを行います。
毎日確認したい3つのこと
シャントは毎日確認する習慣をつけましょう。毎日確認したい3つのことを紹介します。
① シャント音を聞く
耳を近づけると、「ザー、ザー」という血液が流れる音が聞こえます。
毎日聞いていると、いつもと違う音の変化に気付きやすくなります。
② シャントの拍動を触る
手で軽く触れると、「ドクドク」という拍動を感じます。
昨日まで感じていた拍動が急に分からなくなった場合は、シャントの血流に異常が起きている可能性があります。
③ 腫れや赤みを確認する
毎日
- 腫れていないか
- 赤くなっていないか
- 熱っぽくないか
- 痛みがないか
を確認しましょう。
数秒でできる観察ですが、感染や血流障害などの異常を早く見つけることにつながります。
こんな症状はすぐ病院へ
次のような症状があれば、早めに透析施設または病院へ相談してください。
- シャント音が聞こえない
- シャント音がいつもと違う(途切れ途切れに聞こえる)
- 振動が触れなくなった
- 腕が急に腫れた
- 出血が止まらない
- 発熱
- 強い痛み
- 指先が冷たい
- 指が紫色になった
シャントや周囲の閉塞や狭窄、シャントの出血、感染などさまざまなシャントのトラブルが起こっている可能性があります。これらの症状を自覚したら早めに受診することで、シャントを守れる可能性があります。
シャントを長持ちさせるコツ
シャントは一度作れば終わりではありませんし、作ったあとはシャントに負担をかけるような生活を避けるようにしましょう。
シャントを長持ちさせるコツを紹介します。
- 毎日触って確認する
- 腕枕や腕時計、バッグで圧迫しない
- 脱水にならない
- 血圧測定を避ける
- 採血・点滴を避ける
- 定期的に診察を受ける
などです。
個人差はありますが長い方では、10年、20年と同じシャントを使用している方もいます。
仕事や家事はできる?
手術後しばらくは安静が必要ですが、多くの方は普段どおりの生活へ戻れます。
買い物や料理、散歩などの日常生活は可能です。
ただし
- 重い荷物を毎日持つ仕事
- 建設業
- 運送業
- 強く腕を使う仕事
ではシャントに負担がかかる可能性があり、注意が必要な場合があります。仕事へ復帰する時期は主治医と相談するとよいでしょう。
よくある質問
シャントは一生使えますか?
適切に管理できれば長期間使用できる方もいます。
ただし、狭窄や閉塞などが起こることもあり、その場合は治療や再手術が必要になることがあります。
利き腕でも作れますか?
一般的には利き腕ではない方へ作ることが多いですが、血管の状態によっては利き腕に作る場合もあります。
飛行機に乗れますか?
乗れます。
ただし、長時間同じ姿勢にならないよう注意しましょう。
看護師からひとこと

「シャント手術」と聞くと、不安になるのは当然です。
私もこれまで、手術前に緊張した表情で診察へ来られる患者さんをたくさん見てきました。
でも、手術が終わって「思っていたより大丈夫だった」と笑顔で話してくださる方も少なくありません。
シャントは、透析を安全に続けるための大切な命綱です。
毎日少しだけシャントを気にかける習慣が、長く使い続けることにつながります。
分からないことや不安なことがあれば、一人で抱え込まず、遠慮なく医師や看護師へ相談してください。
今日からできること
シャントの手術を受ける予定の方は、次回の受診で次の3つを確認してみましょう。
- 手術は日帰りですか?
- いつ頃から透析で使えますか?
- 手術後に特に気を付けることはありますか?
疑問を解消しておくことで、安心して手術当日を迎えられます。
まとめ
- シャントは透析専用の血管であり、透析を安全に行うために欠かせない
- 多くは自分の動脈と静脈をつないで作る「内シャント」
- 手術は局所麻酔で30〜90分程度、日帰り〜数日の入院が一般的
- 手術後すぐには使えず、通常は2〜4週間ほどかけて発達する
- 毎日「音・振動・見た目」を確認することが大切
- 圧迫を避け、採血や血圧測定はシャントのない腕で行う
- 異常を感じたら早めに医療機関へ相談することで、シャントを長く守れる可能性が高まる


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