「透析を始めると、尿が出なくなるの?」
「透析をしているのに、まだ尿が出るのはおかしくない?」
「尿が出ているのに、どうして透析が必要なの?」
透析を始める前後には、このような疑問を持つ患者さんもいるのではないでしょうか。
結論からいうと、透析を始めたからといって、すぐに尿が出なくなるわけではありません。
透析を始めたあとも、自分の腎臓の働きが残っていて、尿が出る患者さんはいます。このように、透析開始後も残っている腎臓の働きを「残腎機能(残存腎機能)」といいます。
しかし、時間が経ち腎臓の働きがさらに低下していくと、尿量が徐々に減り、ほとんど尿が出なくなる方も少なくありません。
この記事では、透析患者さんの尿量が減る理由や残腎機能、尿が出ていても透析が必要な理由、尿量が減ったあとの水分管理についてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 透析を始めても尿は出るのか
- 透析患者さんの尿量が減る理由
- 尿が出ているのに透析が必要な理由
- 残腎機能とは何か
- 尿量が減ると水分管理はどう変わるのか
- 尿が急に減ったときの対応
透析を始めると尿は出なくなる?
透析を始めると、「これから尿が出なくなるのかな」と心配になるかもしれません。
しかし、透析を始めたからといって、すぐに尿が出なくなるわけではありませんが、多くの方は次第に尿が出なくなる傾向にあります。
透析を始めても尿が出る人はいる
透析は、低下した腎臓の働きの一部を補う治療です。
透析を始めた時点で、自分の腎臓の働きが完全になくなっているとは限りません。
腎臓に尿をつくる働きが残っていれば、透析を始めたあとも尿は出ます。
そのため、
「透析をしているのに尿が出ている」
というのは、おかしなことではありません。
尿量には個人差がある
透析開始後にどのくらい尿が出るかは、人によって大きく異なります。
たとえば、
- 透析を始めたときの腎機能
- 腎不全になった原因
- 透析を続けている期間
- 全身状態
- 透析方法
などによっても違います。
そのため、「透析を始めて○年たったら尿が出なくなる」と一律に決めることはできません。
透析開始後も長く尿が出る人もいれば、徐々に尿量が少なくなっていく人、尿が全くでなくなる人もいます。
尿が出ているのになぜ透析が必要なの?
「まだ尿が出ているなら、腎臓は働いているのでは?」
と思うかもしれません。
ここで知っておきたいのが、尿が出ることと、腎臓が十分に働いていることは同じではないということです。
「尿が出る=腎臓が十分に働いている」ではない
腎臓というと「尿をつくる臓器」というイメージが強いかもしれません。
しかし、腎臓には尿をつくること以外にも、体の状態を一定に保つためのさまざまな働きがあります。
たとえば、
- 体内の老廃物を排泄する
- 余分な水分を排泄する
- ナトリウムやカリウムなどの電解質を調節する
- 体内の酸とアルカリのバランスを調節する
などです。
尿が出ていたとしても、こうした働きが十分にできているとは限りません。
尿量だけで透析が必要かどうかは判断できない
腎機能が大きく低下すると、老廃物や余分な水分、カリウムなどを尿中に十分に排泄できなくなることがあります。そのため、体内にに老廃物が溜まるので、透析で除去する必要が出てくるのです。
つまり「尿が出ているから透析は必要ない」とはいえないのです。
透析が必要かどうかは尿量だけではなく、腎機能や血液検査、体にたまっている水分量、症状などを含めて総合的に判断されます。
「尿が出ているのに、なぜ透析が必要なの?」という疑問を持ったときは、尿の量と腎臓の働きは必ずしも同じではないと考えるとわかりやすいでしょう。
透析患者さんの尿量が減るのはなぜ?
透析開始後も尿が出ていた患者さんが、
「以前より尿が少なくなった」
と感じることがあります。
では、なぜ尿量は減っていくのでしょうか。
腎臓そのものの機能が低下していくため
慢性腎臓病が進行すると、腎臓が本来持っている働きは徐々に低下します。
日本腎臓学会によると、腎機能が低下した初期には尿を濃くする力が低下して尿量が増える場合がありますが、さらに腎機能の低下が進むと尿を作ることができなくなり、尿量も少しずつ減っていきます。
そのため、
「透析をしたから尿が出なくなった」
と単純に考えるのではなく、背景にある腎臓の働きの低下についても考える必要があります。
透析を続けるなかで尿量が減っていくことがある
透析を始めた時点では、腎臓にある程度の働きが残っていることがあります。
しかし、残っている腎機能はその後もどんどん衰え、最後はまったく働かなくなってしまいます。
合わせて腎臓の働きが低下するにつれて、尿を作ることも難しくなり、1日に出る尿の量も徐々に少なくなっていくことがあります。
一方で、その減り方やスピードには個人差があります。
「透析を何年すれば尿が出なくなる」という決まった期間があるわけではありません。
残腎機能とは?
透析患者さんの尿について調べると、「残腎機能」や「残存腎機能」という言葉を目にすることがあります。
透析開始後も残っている自分の腎臓の働き
残腎機能とは、簡単にいうと、
透析を始めたあとも残っている、自分自身の腎臓の働き
のことです。
透析を始めても腎臓の機能がすべて失われるわけではありません。
残腎機能があれば、自分の腎臓から水分や老廃物などをある程度排泄することができます。
日本透析医学会の統計調査でも、残腎機能を評価する項目として尿量や残腎Kt/Vが扱われています。
尿が出ていることは残腎機能のひとつの目安になる
透析開始後も尿が出ている場合、自分の腎臓の働きが残っていることが考えられます。
尿として水分を排泄できれば、体内にたまる水分量にも影響します。
ただし、注意したいのは、
「尿がたくさん出ている=腎臓が十分に働いている」ではない
ということです。
尿量だけを見て腎臓の働きすべてを判断することはできません。
血液透析と腹膜透析では尿量の保ち方が違う?
残腎機能については、透析方法による違いもあります。
東京大学医学部附属病院では、腹膜透析は血液透析と比較して、残っている自分の腎臓の働き(残腎機能)を保持しやすいと説明しています。
腹膜透析では残腎機能が保たれやすいとされている
腹膜透析は、24時間に近い時間をかけて比較的ゆっくりと体内の老廃物や水分を取り除く治療です。
その特徴から、血液透析と比べて残腎機能を保持しやすいと考えられています。
そのため、腹膜透析をしている患者さんでは、自分の尿が出ていることも珍しくありません。
ただし、腹膜透析をしていればずっと尿が出続けるという意味ではありません。
残腎機能は時間の経過とともに低下することがあり、その状態を確認しながら治療内容を調整していきます。
尿量が減ると水分管理はどう変わる?
尿量が減ってくると、透析患者さんにとって特に重要になるのが水分管理です。
飲んだ水分が体にたまりやすくなる
尿が出ている間は、飲んだ水分の一部を尿として体外へ排泄できます。
しかし、尿量が少なくなると、その分だけ水分を体外へ出しにくくなります。
たとえば、水分を1,000mL摂取しても、尿としてある程度排泄できる人と、ほとんど尿が出ない人では、体内に残る水分量が違います。
そのため、同じ透析患者さんでも必要な水分管理は一人ひとり異なります。
余分な水分は体重増加として現れやすくなる
尿として排泄できなかった水分は体内に残ります。
透析患者さんの場合、その変化を確認するための大切な指標のひとつが透析と透析の間の体重増加です。
東京女子医科大学病院も、血液透析患者さんでは水分摂取量と尿量との差が透析間の体重増加として現れると説明しています。
つまり、
飲食から入る水分
↓
尿として排泄する
↓
排泄できなかった水分が体に残る
↓
透析間の体重が増える
という関係があります。
尿量が減ってきた患者さんほど、水分摂取量と体重の変化を確認することが大切になります。
透析で余分な水分を「除水」する
体内にたまった余分な水分は、血液透析の際に取り除きます。
これを「除水」といいます。
ただし、「水分が増えたら透析でたくさん抜けばいい」というわけではありません。
短時間で多くの水分を取り除こうとすると、透析中の血圧低下などにつながることがあります。
そのため、日頃から水分や塩分を管理し、透析間の体重増加を適切な範囲に保つことが大切です。
※関連記事
「透析の除水とは?なぜ水分を抜くの?除水量の決め方をわかりやすく解説」
尿が出なくなったらどうなる?
「もし尿がまったく出なくなったらどうなるの?」
と不安に感じる人もいるでしょう。
体内の余分な水分を透析で取り除く割合が大きくなる
尿量が非常に少なくなると、自分の腎臓から排泄できる水分も少なくなります。
そのため、体内にたまった余分な水分を透析で取り除くことがより重要になります。
尿がほとんど出ない患者さんでは、透析前の体重と目標となるドライウェイトなどを参考に、除水量を決め体に水が溜まらないようにしていきます。
水分・塩分管理がより重要になる
尿がほとんど出ない状態では、飲んだ水分の多くが次の透析まで体内に残ります。
また、塩分を多く摂るとのどが渇きやすくなり、水分摂取量が増える原因にもなります。
そのため、尿量が減ってきたら、
- 水分摂取量
- 塩分摂取量
- 透析間の体重増加
- ドライウェイト
などを確認しながら水分管理をすることが大切です。
ただし、必要な水分量は尿量や体格、病状、透析条件などによって異なります。
「尿が出なくなったから1日○mL」と自己判断するのではなく、透析施設から指示された水分量を目安にしましょう。
※関連記事
「透析患者さんはなぜ水分制限が必要?水分がたまる理由と体への影響を解説」
※関連記事
「透析患者さんは1日に水分をどのくらい飲める?水分量の目安と管理方法を解説」
尿が急に減った・出なくなったときは透析施設へ相談を
透析患者さんでは、残腎機能の低下に伴って徐々に尿量が減っていくことがあります。
一方で、急に尿量が減った場合は「透析をしているから仕方がない」と自己判断しないことが大切です。
徐々に減る場合と急に減る場合は分けて考える
日本腎臓学会では、一般成人で1日の尿量が400mL以下の状態を「乏尿」、100mL以下を「無尿」としています。
尿量は腎機能の低下だけではなく、脱水や心不全、尿路の閉塞などによって減少することもあります。
ただし、もともと尿量が少ない透析患者さんの場合、一般的な数値だけで判断するのは適切ではありません。
大切なのは、普段の自分の尿量と比べてどう変化したかです。
普段と明らかに違う場合は自己判断しない
たとえば、
- いつもより明らかに尿量が少ない
- 急にほとんど尿が出なくなった
- むくみが強くなった
- 短期間で体重が大きく増えた
- 息苦しさがある
- いつもと違う体調変化がある
といった場合は、透析施設へ相談しましょう。
特に息苦しさなど強い症状がある場合は、次の透析日まで待たずに医療機関へ連絡することが大切です。
透析患者さんの尿についてよくある質問
透析を始めたら必ず尿が出なくなりますか?
いいえ。
透析を始めても、自分の腎臓の働きが残っていれば尿は出ます。
透析開始後の尿量や尿が出る期間には個人差があります。
透析を始めて何年くらいで尿が出なくなりますか?
一律には決められません。
透析開始時の腎機能や原疾患、全身状態、透析方法などによって異なります。
「透析開始から○年で必ず尿が出なくなる」と考える必要はありません。
尿が出ているなら透析をやめられますか?
尿が出ているという理由だけで透析を中止することはできません。
尿量と腎臓が老廃物などを排泄する能力は同じではないためです。
透析が必要かどうかは、血液検査や腎機能、体液量、症状などを含めて医師が総合的に判断します。
尿が出ていれば水分制限は必要ありませんか?
尿が出ているからといって、自由に水分を摂ってよいとは限りません。
一方で、尿量が残っている患者さんとほとんど尿が出ない患者さんでは、水分管理の方法が異なる場合があります。
自分に必要な水分量については、透析施設の医師・看護師・管理栄養士などに確認しましょう。
尿を出すために水をたくさん飲んだほうがいいですか?
自己判断で水分摂取量を増やすことはおすすめできません。
腎機能が大きく低下している場合、水分を多く飲んでもその分だけ尿として排泄できるとは限らず、余分な水分が体内にたまってしまう可能性があります。
「尿を出したいから水をたくさん飲む」のではなく、自分の尿量や病状に合わせて指示された水分量を守ることが大切です。
まとめ|透析を始めてもすぐに尿が出なくなるわけではない
透析を始めたからといって、すぐに尿が出なくなるわけではありません。
透析開始後も自分の腎臓の働きが残っていれば、尿が出る患者さんはいます。この残っている腎臓の働きを残腎機能といいます。
一方で、腎臓の働きが低下していくにつれて、尿量が徐々に減ることがあります。
また、覚えておきたいのは、「尿が出ている=腎臓が十分に働いている」ではないということです。尿が出ていても、老廃物や余分な水分、電解質などを十分に排泄できなければ透析が必要になることがあります。
尿量が減ると、飲食から摂った水分が体内に残りやすくなるため、水分・塩分や透析間の体重増加の管理がより重要になります。
そして、「いつもより明らかに尿が少ない」「急に尿が出なくなった」など普段と違う変化があった場合は、自己判断せず透析施設へ相談しましょう。


コメント