「透析を始めたら、もう旅行には行けないのかな?」
透析を始めたばかりの患者さんから、このような声を聞くことがあります。
血液透析は一般的に週3回行うため、「透析の日があるから何日も家を空けられない」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、透析をしているからといって、旅行をあきらめる必要はありません。
旅行先の透析施設を事前に予約して透析を受ける「旅行透析(臨時透析)」を利用すれば、透析スケジュールに合わせながら国内旅行を計画できます。
ただし、普段とは違う施設で透析を受けるため、一般的な旅行とは少し準備が異なります。
この記事では、透析患者さんが国内旅行をするときに知っておきたい、
- 透析をしていても旅行できるのか
- 旅行透析とは何か
- 旅行先の透析施設の探し方
- 旅行透析の予約方法
- いつごろから準備すればよいのか
- 旅行前に準備する書類
- 旅行に持っていきたいもの
について、わかりやすく解説します。
透析をしていても旅行はできる
血液透析を受けていても、体調が安定していて、主治医から問題ないと判断されれば旅行を楽しむことはできます。
それは、国内・海外、長期・短期を問いません。
ポイントになるのが、旅行前・中・後の透析をどうやって続けるのかです。
たとえば月・水・金曜日に透析をしている方が、木曜日から日曜日まで旅行するとしましょう。
金曜日には透析が必要になります。
この場合、自宅近くのいつもの透析施設に戻るのではなく、旅行先にある透析施設で金曜日の透析を受ける方法があります。
これが一般的に「旅行透析」や「臨時透析」と呼ばれるものです。
旅行先で透析を受けられるようにしておけば、
「透析があるから1泊しかできない」
というわけではありません。
旅行先や日程、受け入れてくれる透析施設を事前に調整することで、旅行の選択肢は広がります。
旅行透析(臨時透析)とは?
旅行透析とは、旅行や帰省、出張などの際に、普段通院している施設とは別の透析施設で一時的に透析を受けることです。
医療機関によっては「臨時透析」「旅行者透析」などと呼ばれることもあります。
旅行透析を利用する理由はさまざまです。
- 観光旅行
- 温泉旅行
- 帰省
- 冠婚葬祭
- 出張
- 家族や友人に会いに行く
など、旅行だけに限りません。
普段とは違う透析施設で治療を受けるため、事前に予約し、現在の透析条件などを旅行先の施設へ伝えておく必要があります。
まずは「旅行の日程を決める」より主治医・透析スタッフに相談しよう
旅行を考え始めたら、まず現在通っている透析施設の医師やスタッフに相談してみましょう。
特に
- 最近体調が安定しているか
- 血圧に大きな変動がないか
- 心臓などの合併症が安定しているか
- シャントに問題がないか
- 旅行日程に無理がないか
などを確認しておくことが大切です。
また、旅行透析では現在の透析条件などを旅行先の医療機関へ伝える必要があります。
そのため、旅行が決まってから突然、
「来週旅行に行くので書類をお願いします」
となるより、早めに相談しておいたほうが準備を進めやすくなります。
旅行透析はどのくらい前から準備すればいい?
旅行先と日程が決まったら、できるだけ早めに透析施設を探しましょう。
旅行透析を受け入れている施設であっても、希望する日に必ず予約できるとは限りません。
透析ベッドの空き状況や曜日、時間帯などによって受け入れられないこともあります。
旅行透析については、旅行の1か月前までを目安に依頼することが患者向け資料でも案内されています。
ただし、これは「1か月前なら必ず予約できる」という意味ではありません。
大型連休やお盆、年末年始、観光シーズンなどは予約が集中する可能性もあります。
旅行の日程が決まったら、早めに動き始めると安心です。
旅行先の透析施設はどうやって探す?
旅行透析を計画するときに、最初のハードルになりやすいのが、
「旅行先のどこで透析を受ければいいの?」
という問題です。
透析施設を探す方法はいくつかあります。
① 普段通っている透析施設に相談する
まずおすすめしたいのが、現在通っている透析施設への相談です。
旅行先を伝えることで、旅行透析を受けられる施設を一緒に探してもらえる場合があります。
初めて旅行透析を利用する方は、
「○月ごろに○○へ旅行したいのですが、旅行透析はできますか?」
とスタッフへ相談してみましょう。
② インターネットで旅行透析を受け入れている施設を探す
自分で探すこともできます。
たとえば、
「札幌 旅行透析」
「大阪 臨時透析」
「沖縄 旅行透析」
など、旅行先+旅行透析(臨時透析)で検索すると、旅行透析を案内している医療機関が見つかることがあります。
ただし、ホームページに「旅行透析対応」と書かれていても、希望日に空きがあるとは限りません。
必ず医療機関へ確認しましょう。
旅行透析の予約方法
旅行透析の大まかな流れを確認してみましょう。
STEP1 旅行先と日程を決める
まず、
「いつ、どこへ旅行するのか」
を決めます。
この段階で、普段の透析曜日と旅行日程を照らし合わせてみましょう。
旅行中に透析日が含まれる場合は、旅行透析の手配が必要になります。
STEP2 旅行先の透析施設を探す
宿泊先から通いやすい透析施設を探します。
ここで意外と重要なのが距離だけでなく移動方法です。
ホテルから近くても公共交通機関が少なかったり、透析終了後にタクシーが必要になったりする場合があります。
旅行全体の日程を考えながら施設を選びましょう。
STEP3 旅行透析を受けられるか確認する
候補の透析施設が見つかったら、希望日に旅行透析を受け入れてもらえるか確認します。
医療機関によって予約方法は異なります。
患者さん本人から連絡する場合もあれば、現在通院している透析施設から連絡する場合もあります。
予約するときには、
- 希望する透析日
- 希望する時間帯
- 氏名
- 普段通っている透析施設
- 連絡先
などを確認されることがあります。
必要な情報は施設によって異なるため、予約先の指示に従ってください。
STEP4 普段の透析施設から必要な情報を送る
予約が決まったら、現在の透析条件などを旅行先の透析施設へ伝えます。
一般的には、
- 診療情報提供書(紹介状)
- 現在の透析条件
- ドライウェイト
- 透析時間
- 使用しているダイアライザ
- 血流量などの透析条件
- シャントなどのアクセス情報
- 使用している薬剤
- 最近の検査データ
- 感染症に関する検査結果
などの情報が必要になることがあります。
実際に何が必要かは旅行先の透析施設によって異なります。
普段通っている施設と旅行先の施設との間で情報をやり取りしてもらえる場合もあります。
STEP5 予約内容をもう一度確認する
旅行前には、
「○月○日、○時から、○○クリニック」
というように予約内容を確認しておきましょう。
あわせて、
- 透析開始時間
- 何分前に到着すればよいか
- 医療機関の住所
- 電話番号
- ホテルからの移動方法
- 当日の持ち物
まで確認しておくと安心です。
旅行透析で準備しておきたい書類
旅行先の透析施設では、あなたが普段どのような条件で透析を受けているのか分かりません。
そのため、医療情報を正確に共有することが重要です。
旅行透析では、主治医の紹介状や診療情報、透析条件などの書類を準備し、旅行先の透析施設へ送ることがあります。
さらに、出発直前に受けた透析の記録を持参することが推奨されています。
必要な書類については、
「旅行先の透析施設から指定されたものを準備する」
と考えておくとよいでしょう。
国内旅行で持っていきたいもの
旅行透析を利用する場合は、一般的な旅行用品とは別に医療関係のものも忘れないようにしましょう。
代表的なものとして、
- マイナ保険証または資格確認書など
- 特定疾病療養受療証
- 身体障害者手帳
- 医療費助成に関係する受給者証
- 主治医の紹介状など指定された書類
- 直近の透析記録
- お薬手帳
- 普段飲んでいる薬
などがあります。
必要なものは加入している保険制度や自治体の医療費助成、旅行先の透析施設によって異なります。
特に医療費に関係する書類については、旅行前に確認しておきましょう。
薬は旅行日数ぴったりではなく余裕を持って
旅行では予定外のことが起こる可能性があります。
交通機関の遅延や欠航、悪天候などによって、予定していた日に帰宅できないこともあります。
そのため、普段服用している薬についても、旅行日数分だけを持っていくのではなく、多少余裕を持って準備しておくと安心です。
また、薬を普段とは違うバッグに入れることで飲み忘れることもあります。
旅行中も普段と同じ時間に服用できるよう、お薬手帳と一緒に管理しておきましょう。
旅行透析では普段と違うことがあっても慌てない
初めて旅行透析を受けると、
「いつもの透析室と全然違う」
と感じるかもしれません。
透析施設によって、
- ベッドや椅子
- 透析装置
- 穿刺方法
- 血圧測定のタイミング
- 食事の有無
- テレビなどの設備
- 透析中の過ごし方
などが異なることがあります。
普段と違う環境で緊張するのは自然なことです。
一方で、普段の透析で困っていることや注意してほしいことは遠慮せず伝えましょう。
たとえば、
「血圧が下がりやすいです」
「この部分は穿刺が難しいです」
「テープで皮膚がかぶれやすいです」
など、普段の透析でスタッフと共有していることがあれば、旅行先でも伝えてください。
旅行の日程は「透析を中心」に考えると組みやすい
旅行透析を初めて計画するときは、
「観光の日程を全部決めてから透析を入れる」
よりも、
「透析の予定を決めてから、その前後に観光を入れる」
と考えるほうがスケジュールを組みやすくなります。
特に透析終了後は疲れを感じる方もいます。
透析を受けた直後に移動や観光を詰め込みすぎず、余裕を持った旅行計画にしておきましょう。
旅行透析を上手に利用して旅行を楽しもう
透析を始めると、
「これまでのように旅行できなくなる」
と思ってしまうかもしれません。
確かに、透析を受けていなかったころと比べれば、旅行前に準備することは増えます。
旅行先の透析施設を探し、予約し、現在の透析条件を伝え、必要な書類を準備する必要があります。
しかし、一つずつ準備していけば、透析を続けながら旅行を楽しむことは可能です。
初めて旅行透析を利用するときは、まず普段通っている透析施設のスタッフに、
「旅行に行きたいのですが、旅行透析について相談できますか?」
と声をかけてみてください。
旅行に行くことも、透析をしながら続けていける大切な生活の一部です。
無理のない計画を立てて、旅行を楽しみましょう。


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